注目ワード:
  1. TOP
  2. 【SUSTAINABLE THINK.】 Magazine RICCI EVERYDAY by minami fujioka

About RICCI EVERYDAY

RICCI EVERYDAYは、“好ましい”より、 “好き”を選び、ワクワクしながら自分らしさを見つける場。
ウガンダの工房では、都市部にくらすシングルマザーや元子ども兵といった、社会的に疎外された人々を「作り手」として生産活動に巻き込んでいます。 彼女たちは、元々は高等教育を受けられずまともな仕事につけず日々の生活をどうにか成り立たせてきました。 今では仕事を通じて定期収入を得ながら生活を向上させると同時に、自らが手掛けた製品を誇りをもって世界に送り出すことで自信を得て、本来のありたい姿になって活躍しています。

藤岡みなみの
小さな一歩が織る世界

第1回

この夏、私はどこか力をなくしていた。起業と出産が重なって、想像以上の慌ただしさに不安と焦りを抱えていたのだ。また、社会では異なるものを遠ざける風向きが強まっているように見え、無力感に押しつぶされそうにもなった。そろそろ誕生日だし、元気を出すために自分に何か買おうかと思ったけれど、欲しいものすら浮かばなかった。
いまにも溶けてしまいそうなある日、社会起業家の仲本千津さんに出会った。アフリカンプリントを使ったアパレルブランド「RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)」を立ち上げ、現地の人たちとビジネスを始めて今年で10年を迎える。

 

オレンジとブルー、赤と緑。反対色が入り混じる布は華やかでありながら、どこか落ち着きを帯びている。仲本さんが着ているブラウスには、水面に広がる波紋の模様が揺れていた。「井戸に石を落としたように、周りに影響が広がっていく」という意味が込められているという。

アフリカンプリントには伝統の柄が数十種類あるほか、日々新しい柄も次々と生まれている。幾何学模様のパターンは、前衛的であり懐かしくもあるから不思議だ。服や鞄というより、アートを見ている感覚になる。

その日、無地のワンピースを着ていた私は、自分の体にもユニークな柄をまといたい衝動に駆られた。もっと心が動く服を着たいのに、無難さばかりを優先してしまう。環境にも人にも優しくないと知りながら、ついファストファッションに頼ってしまうこともある。

「全部をサステナブルにしようと思うと苦しくなっちゃうじゃないですか。クローゼットの10%だけでも、好きで長く着られるものや、誰かの温もりを感じられるものにすればいい。何においてもスモールスタートでいいんです。」

仲本さんの言葉は、そのまま今の私に向けられているように感じた。仕事もプライベートも、完璧を求めると身動きが取れなくなる。小さくても一歩を踏み出せればいい。そう思うだけで、ふっと肩の力が抜けた。

サークルカーニバル、と名付けられた柄のワンピースを見せてもらった。ピンクと緑、紫と黄色、対照的な色の渦巻きが見えないメロディに合わせて跳ね回る。異なるもの同士が共に存在できることを、そっと教えてくれているようでもある。ポケットがついているのが機能的でかなりありがたい。祭りっぽいのに日常の服なのだ。

RICCI EVERYDAYのアイテムはすべて、ウガンダの女性たちの手仕事によるもの。仲本さんの工房では、シングルマザーをはじめ生活環境の厳しい女性たちを雇用し、経済的自立を後押ししている。

「服は全部、ジポラが一人で作っています。」

その時、ジポラ、という名前がやけに耳に残った。4人の子どもがいる40代の女性で、服作りがとても得意なのだという。その名前を聞いた瞬間、さっきまで漠然としていた「ウガンダの女性たち」の像が、鮮やかに輪郭を結んだ。

この美しいワンピースは、どこかの誰かではなく、ウガンダのジポラさんが作ったものなのだ。1日に1着を仕上げるほど仕事が早いらしい。家に帰れば私と同じように、「お願いだから早く歯を磨いてベッドに入って」と子どもに言っているかもしれない。

そう、異文化との心の出会いは、抽象的な「国」や「人々」ではなく一人の具体的な名前から始まる。誕生日に、ジポラさんの作った服を買いたいと思った。

「ある国に対してちょっとこわいなみたいなふうに思ったとしても、その人たちが作ったものに触れたりしたらなんかすごい綺麗とか、美味しいとか、そういう偶然の出会いで考えや価値観が変わるってこともあるわけじゃないですか。それを生み出すために私たちが発信をしないといけないって思います。」

仲本さんの想いが頼もしく胸に響いた。社会をよくしたいと思っても、途方に暮れてしまう時がある。疲れて眠るしかない日もある。でも、同じ気持ちで前を向いている人が必ずいる。ウガンダで今日もミシンに向かう彼女がいる。

私たちは一人じゃない。たとえ会ったことがなくても連帯できる。異なる私たちの小さな一歩が重なれば、一枚の布のようにやさしい世界が織り上がっていくと信じている。

    

ワンハンドル(キンチャク)¥6,600税込
マルチケース(カラフルペンシル)¥3,410税込 /マルチケース(柿渋流れ)¥3,410税込

ミニアケロ38(カラフルペンシル) ¥12,980税込
ミニアケロ38(アイ・グリーンライトグリーン) ¥12,980税込
アケロポシェット38 (サークルフェス)¥11,550税込

    

PICK UP ITEMS

RICCI EVERYDAY

Aドレス【幾何学サークル】

¥26,400(税込)

RICCI EVERYDAY

ギャザースカート 【 幾何学サークル】

¥22,000(税込)

RICCI EVERYDAY

アミニアケロ 38

¥12,980(税込)

RICCI EVERYDAY

アケロポシェット 38

¥11,580(税込)

ALL ITEM

PROFILE

藤岡 みなみ
1988年生まれ。文筆家、ラジオパーソナリティ。主な著書に、異文化をテーマにしたエッセイ集『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)や、『ふやすミニマリスト』(幻冬舎)、時間旅行ZINEシリーズなどがある。ドキュメンタリー映画『タリナイ』『keememej』プロデューサー。時間SFと縄文時代が好きで「読書や遺跡巡りって現実にある時間旅行かも?」と思い、2019年に「タイムトラベル専門書店 utouto」を開始。2025年秋に都内に実店舗をオープン予定。

X ▷
note ▷
instagram ▷
BRAND TOP